教授挨拶 Message from the Chief Professor

日本医科大学アレルギー膠原病内科学分野(日本医科大学付属病院リウマチ・膠原病内科)のホームページを閲覧いただき誠にありがとうございます。
膠原病は全身の様々な症状を呈する疾患で、類縁疾患まで含めるとわが国の患者数は200万人を越えます。しかし、医療従事者の中でも病気に対する認知度は低く、専門医も大幅に不足していることから、適切な治療を受けられてない患者さんが少なくないことが知られています。膠原病では様々な臓器の機能が低下し、さらに不適切なステロイド使用による副作用にため生活の質が徐々に低下していく病気です。働き盛り世代での発病が多く、社会的影響がきわめて大きいことから、専門的医療の社会的ニーズが高まっています。
わが国の医療は急速な高齢化、医療費の増大、専門医や臨床研究などの制度改革、働き方改革、AI導入などにより激動の時代を迎えています。 その中で大学病院・医学部・大学院の役割も大きく変化しつつありますが、当教室では医学・医療の発展に貢献する使命を肝に銘じ、スタッフ全員で日々切磋琢磨しています。

日本医科大学大学院医学研究科アレルギー膠原病内科学分野
日本医科大学付属病院リウマチ・膠原病内科
桑名正隆

<診療>

当分野で扱う疾患は関節リウマチをはじめとした炎症性骨関節疾患、全身性エリテマトーデス、強皮症、多発性筋炎/皮膚筋炎、ベーチェット病、各種血管炎症候群など多岐に渡ります。いずれも慢性かつ難治性なことから、患者さんの目線で全人的医療を提供できるよう努めています。また、早期診断・早期治療を実践できるよう近隣のクリニックや医院との密な連携を重視し、地域医療の向上を目指しています。当科の診療における強みは以下の4点です。

1. 専門性の高さ

膠原病では、診断がつかずに医療機関や診療科を転々とした患者さんを多く見受けます。あるいは、治療判断が難しく、結果的に機能障害が進行したり、治療による副作用や合併症で苦しむケースもあります。膠原病各疾患は原因に基づいて分類されてないため、診断に苦慮する例が多く見られます。そのため、診療には豊富な診療経験と高度の専門性が求められます。当科は国内有数の経験豊富なスタッフを揃えており、それぞれが国内診療ガイドライン作成だけでなく、国際的な疾患克服への取り組みの中心的役割も果たしています。特に強皮症(全身性強皮症、全身性硬化症ともよばれます)、多発性筋炎/皮膚筋炎、ベーチェット病、膠原病に伴う間質性肺炎(間質性肺疾患)や肺高血圧症の診療では国内随一の患者数を誇り、日本各地から専門的診療を求めて多くの患者さんが集まっています。このような患者さんにとっては、私たちが「最後の砦」なのです。

2. 総合診療

膠原病の診断は他疾患の除外が前提になるため、常に幅広い視点からの鑑別が必要です。また、膠原病では複数の臓器が障害されることが常で、治療により感染症、動脈硬化、骨粗鬆症など様々な合併症も誘発されます。そのため、詳細な問診、全身の診察、検査所見から得られた情報を広い視野に立って総合的に判断する能力が求められます。その意味で、内科サブスペシャリティの中でも最も内科らしいと言えます。当科ではリウマチ専門医はもとより、神経、腎臓、呼吸器専門医を持つスタッフを揃えており、視野の広い診療を実践しています。

3. チーム医療

膠原病は呼吸器、循環器、腎臓、神経など全身に症状をきたすことから、内科他領域、皮膚科、眼科をはじめ多くの診療科との密な連携を行っています。また、患者さんに最善の医療を提供するために、看護師や薬剤師などの他職種、近隣の医療機関まで広げた連携の輪を重視しています。

4. 難治性病態に対する取り組み

膠原病領域では次々と新しい分子標的薬が導入され、治療成績は確実に向上しています。ただし、いまだに改善が十分でない難治性病態、たとえば強皮症、肺高血圧症、間質性肺疾患などが残されています。これらの克服のため、研究成果の実用化だけでなく、難治稀少疾患に対する新規治療の開発段階から積極的に関わり、グローバル臨床試験の中心メンバーとして日本での実施とりまとめ役を果たしています。臨床試験に参加することで、他院では受けることのできない新薬による治療を受けることも可能です。

<研究>

医学は急速に進歩していますが、いまだ十分な診療成績の向上が達成できない疾患や病態が多数残されています。それらの克服にはさらなる研究が必要で、成果を積み重ねて新しい臨床診断技術や治療に応用することが大学の責務と考えます。私たちの研究成果の一部は、すでに臨床検査として世界中で広く実用化されています(抗RNAポリメラーゼⅢ抗体、抗MDA5抗体など)。医療人が推し進める研究であることから、診療で生じた疑問や必要性を研究のモチベーションにすることを大切にしています。膠原病の病態に関わる自己免疫、線維化をキーワードに、基礎的な研究から臨床研究まで様々な研究を展開しています。

<教育>

大学の最大の使命は次世代を担う医師・研究者の育成です。教育では、各々の好奇心や探求心を伸ばし、全ての患者さんに対し思いやりの気持ちで接し、全人的医療を提供できる医師の育成に努めています。チーム医療を実践することにより、医師として視野が広がるだけでなく、医療人としての素養も高まります。そのために、専攻医の目線で魅力のある研修プログラムをスタッフ全員で作りました。未診断、未治療の初診患者が多数受診する日本医科大学付属病院の利点を生かし、経験豊富な専門医の指導のもとで診断から治療方針の決定、治療後の評価までの流れを繰り返し学ぶことができます。また、優れた指導医のいる連携施設との密なネットワークを構築しており、最短で内科専門医、リウマチ専門医を取得することができます。同時に総合診療のスキルを身につければ、将来のキャリア選択肢も大きく広がります。また、各々の希望に合わせたフレキシビリティーも大きな特長で、専門診療から総合診療、海外留学、育児などを考慮した働き方など様々な進路への対応が可能です。

日本医科大学アレルギー膠原病内科分野では若手医師・研究者を育成するとともに、付属病院では最善の医療を患者さんに提供するとことで、明日の医療を創造し続けることを目標にしています。私たちと力を合わせて新たな膠原病医療の1ページを作り上げていく仲間を募集しています。また、膠原病が疑われている方、あるいは難治性の病態を抱えた膠原病の患者さんのご来院、ご紹介を心よりお待ちしています。